2011年05月19日

映画『(500)日のサマー』のこと



映画『(500)日のサマー』のDVDを見ました。バンドメンバーでお友達のロペ君、じゃなかったわくわくフェア君がレビューしてるのを読んで、興味がわいたのです。

あらすじとかは面倒なので、気になった方は、どっかで適当に見てきてね。でも簡単に説明するには、映画冒頭の字幕で出てくる「AUTHOR'S NOTE」をそのまま引用するのがいちばん手っ取り早いのではないでしょうか。いわく「この物語はフィクションであり、実在のあらゆる生者や死者との類似は純粋に偶然によるものです。とくにお前のことだよ、ジェニー・ベックマン。…このビッチめ!」。ジェニー・ベックマンさんが実名なのか「AUTHOR'S NOTE」じたいも仕掛けなのかはともかく、まあようはそういう主旨の映画です。「ビッチ」と出会い、恋をし、振り回され、わけの分からんうちにポイ捨てされるまでの500日を、徹底的に主人公の男のコ(?)の側からの視点のみで描いてる。

…で、とりあえず2回観たんだけれど、まだ心にモヤモヤが残ってます。きっとこれからも、何度も見返す映画になるのじゃないかな(^_^;) なので、いろんな人の感想なんかも読んでみたのだけど、以下、僕はココが心に引っかかったよ、こう思ったよ、っていう今の時点でのメモを、いくつか箇条書きっぽく書き留めておこうと思う。

# サマーを演じるズーイー・デシャネルは、個人的には顔も声もあんまし好みではなかった。なので、どっちかというと、すでに完全に冷静になって単なる「あのビッチ」になってるかもしれない「500日以降」のトムに近い視点で僕はこの映画を見てしまったかもしれない。これがたとえば(少し若いころの)シャルロット・ゲンズブールだったりしたら、トムに感情移入しすぎて泣いてたかもしれないけれどさ。ズーイー・デシャネルが超好みって男子とか、ズーイー・デシャネル可愛い!って女子が見たサマーは、もしかすると僕とはだいぶ印象が違うのかも? でもヘッドフォンから漏れてる音を聴いた女子に「私もスミス大好きなの!」なんて声かけられたら、相手の魅力は30倍増しくらいに見えるだろうし、運命を「勘違い」してしまう気持ちは元インディーロック少年なら誰でもよく分かるはず。

# そう見えるよう演出されていたのかそう見えただけかは分からないが、劇中のサマーはどんどん魅力がなくなってゆくように思った。もちろんトムのせいって部分もあるのだろうけど。でも最後の公園のシーンとか、結婚して幸せの絶頂のはずのサマーは冴えなくて、輝いてもいないしあまり幸せそうにも見えないのだよね。オータムを演じたミンカ・ケリーのが、断然キュートに見えた。

# 男からみた女性は、全員とは言わないし程度もあるけど、でも「みーんな、サマー」って面はあるのじゃないかな。ただし「サマーって私!」って女性に言われると、それはまたなんか違う気がする(^_^;) つまり、男の視点から見た女性の「わけわかんねーなあ、なんなんだよ一体」な面を、徹底的に「わけわかんない」ままに(時にはわりかし悪意も込めて)描写してみたのがサマーだと思うのです。だから「サマーのキモチ、よく分かる〜☆」みたいな一部の女性の感想は、正直よく分からない。パーティに呼ばれたトムがサマーの薬指に指輪を見つけるシーンはちょっと泣きそうになった。女性の方、ちょっとああいう心理を解説してください。サマーさん、いくらなんでもあれはビッチすぎるだろ、死ねよ…

# 映画『卒業』のラストシーン。あそこは単純な感動のシーンじゃなくて、すでに後悔とか未来への不安が2人の表情に現れてるのが名シーンと言われる所以なわけだよね…と思ってたのだけれど、どうなんでしょう。でもそれを見ているサマーは目をきらきらさせて、単純に「運命の出会い」に感動してしまってるみたいに見える。子供の頃のトムが「運命」を信じた体験を、「運命」に懐疑的になりつつあるトムとは逆に、年を取った今になって幼稚な追体験をしているだけ。というような理由で、トムとはぎゃくに「運命」を信じるようになったサマーの結婚生活はきっとうまく行かないはず。というか、うまく行かないといいな、というのが願望かなあ。

# トムについては、共感して同化するというよりは、観客は自分のなかの似た「イタイ」感じをむず痒く感じたり「うわー(>_<)」みたいに頭をカベにぶつけたくなる感じであえて描写されてる気がしました。彼女と話すきっかけになったスミスの曲を、さりげなく相手の耳に届くようiTunesのボリュームを上げて、でも意図的にやった2度目は完全に無視されるとことか)。少なくとも僕はところどころ、頭を抱えて床を転げ回りたい気分になったよw それからカラオケでpixiesを歌ってる声がブラック・フランシスに似すぎてて笑った。それとももしかして、オリジナルの音源をそのまま使ってるだけ?

# ベタな部分も含めて、細かい演出や仕掛けは全般的に洒落てて良かったと思う。サマーとセックスした翌朝の浮かれたトムが鏡がわりにクルマの窓を覗き込むとハリソン・フォードが写ってるとことか、ミュージカルシーンとかさ。映画ラストの、オータムのなまえを知ったあとのカメラ目線とか、そのままエンディングのMumm-ra『She's Got You High』に入ってゆくとことか。アニメーションも良かった。

# トムの妹の存在が、『ライ麦畑』におけるフィービーみたいで良かった(トムがホールデン・コールフィールドとして描かれてることも、同時によく分かる)。

# トムがコールフィールドを「卒業した」のかはよく分からない。「成長譚」はよくある典型的な物語の主題だけど、でも本当に卒業しなきゃいけないのかは、実際よく分からないし。でも「サマーという経験」を積んでオータムと出会ったという意味では(それに、上でも書いたけどオータムを演じたミンカ・ケリーのが断然キュートに見えたので)オータムの存在はオチでも蛇足でも付けたしでもなくて、じつはサマーじたいがオータムと出会うための歯車だったのかもしれないよね…というふうに考えてみたら、この映画についての見方はだいぶすっきりしました。つまりこの映画は少し長めの「序章」なのかもね。といっても、本編はとくに見なくてよいようなものかもしれない。サマーにはサマーの物語があるはずだが、やはりこの映画じたいはあくまでも「トム」のための物語なんだと思う。

# 過去の公園シーンにじつはオータムが映り込んでたりしたら楽しいかも、と思って見直したけどたぶん映ってなかった。でもどっかにいたんだよね、オータムもあのとききっと。

…と、男の僕は徹底的にトムびいきの視点で見ちゃいましたが、感想はそんな感じ。サマー擁護派の声が聞きたいです。
タグ:映画
posted by PAS DE CHAT at 17:21| Comment(2) | 黒猫の雑記帳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
丁寧に書かれてていいですね。
サマーはトムの事が最初からそんなに好きではなかったんだろうけど、結構思わせぶりなこともしていて腹立つなぁと思いますねw。そんなに好意がなくても最初は嫌な気もしてないというか。あー。
まぁ最後は能動的なトム(ちゃんと自分から声をかける)ところがみれて良かったです。トムはサマーをかわいいと思いながら、エレベーターで2人になっても自分からは声をかけれなかったからね。スミスの件でサマーから声をかけられて運命だと思っちゃうって、まぁちょっとね、ダメだね。わたしも似たようなもんですが。
この映画は興味をひっぱる編集の仕方がやっぱり新しいというか、画期的だったんじゃないかとおもいます。
Posted by わくわくフェア at 2011年05月19日 21:01
>編集
センス良いなと思いつつ(というか多くの映画でどうしても気になる『ココだけはやぼったいな』みたいな部分があまり気にならなかった)自分が新しい映画じたいをあんまり見てないのでそれほど確信は持てなかったわけなのだけど、やっぱりけっこう画期的なわけなのね、これ。
時系列を切り刻んでフラッシュバックさせる手法じたいも、場合によっては分かりにくくなるだけのこともあると思うんだけど、結末は最初から見えてる一方通行の物語なぶん、そのへんもうまく働いてましたよね。

>サマーはトムの事が最初から
ぶっちゃけ、そもそもトムの友達から「トムは君にベタボレ」って聞いたから関心を持ったってだけだよね。だからサマーにとっては運命でもなんでもないのは当たり前だったわけで。
スミスの件は…やっぱりスミスを聴いてるときだから特別だとトムは思っちゃったのであって、ビートルズを聴いてるときに「それビートルズ?」だったらトムもそこまでのめり込まなかったはず。一方サマーはスミスであろうがビートルズであろうがレディ・ガガであろうが、知ってる音楽ならたぶん「それ○○? 素敵ね」って女の子だったんじゃないかな。客観的に見て、ダメだね、なのは分かるんだけど、でもトムの気持ちはすごく分かるんだよw 世の女子たちだって、スミス聴いてる男子に「それってスミス?」って聴くからには、自分がモリッシーにとってのジョニー・マーになるくらいの覚悟は、最初から持っておいてもらわないとさー。ビートルズとはわけが違うんだんぜ…て、俺もぜんぜんダメみたいです(爆)

>まぁ最後は
うん、運命の「偶然」に頼らず、偶然を「運命」に変えようとする人間に変わるラストは良かったです。そのへんも最終的に「偶然=運命」で他の男と結婚しちゃったサマーと対比されてるよね。でも、能動的に行動できないダメダメな主人公にも、どうも愛着は感じてしまうんだな…
Posted by クロネコ at 2011年05月19日 22:50
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